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診療案内Guide

猫の乳腺腫瘍(アビシニアン 15歳避妊メス)

乳腺にしこりができており、最近大きくなってきたとのことで来院。
右第1乳腺に直径2cmの腫瘤、第2、第5乳腺に直径5mmほどの腫瘤を確認しました。
左側の乳腺には確認される腫瘤はありませんでした。
血液検査では腎数値の軽度上昇を認めました。胸部レントゲン検査では特に異常は認めませんでした。

第1乳腺に直径2cmの腫瘤、
第2、第5乳腺にもしこりが確認できました。

高齢猫なので麻酔のリスクをオーナー様は心配されていましたが、猫の乳腺腫瘍は80%以上が悪性であること、腫瘍の直径が3cmを超えると予後がかなり悪くなること(生存期間中央値:4〜12ヶ月)を説明し、手術を選択されました。

手術は右乳腺片側全摘出術を実施、鼠径リンパ節及び腋窩リンパ節の切除も同時に行いました。麻酔にはモルヒネ、ケタミン等を使用し、全体の麻酔量を軽減することで血圧を維持することができました。術後の覚醒も良好で、疼痛管理のため翌日まで持続点滴を行いました。術後日で元気食欲も問題なくなり退院としました。10日後に抜糸をして傷の癒合を確認した後、術後1ヶ月で左乳腺も全摘出しました。

右側片側乳腺全摘後。およそ1ヶ月後、
同様の手術を左乳腺にも実施しました。

病理組織検査の結果は右の第1、2、5乳腺は乳腺腺癌という結果でした。いずれの腫瘍もマージンが確保されており、右鼠径リンパ節、腋窩リンパ節に腫瘍細胞は確認されませんでした。左の乳腺には腫瘍組織は認められませんでした。

猫の乳腺癌の場合、リンパ組織に転移がなくても肺に転移することがあるので定期的に肺野のレントゲン撮影と血液検査による腎臓のチェックをおこなっていますが、術後3ヶ月現在、転移や腎不全の発現等は認められません。

コメント

猫の乳腺腫瘍は猫では三番目に多い腫瘍で雌猫の全腫瘍中17%を占めます。犬の乳腺腫瘍との違いは猫では乳腺腫瘍の80%以上が悪性腫瘍であるということです。(犬では50%:50%)

猫の乳腺腫瘍の予後は腫瘍の大きさ、組織学的グレード、手術範囲が挙げられます。腫瘍の大きさが2cm未満では生存期間中央値が3年以上なのに対し3cm以上では4〜12ヶ月と大きく違います。また、手術範囲では左右の乳腺を全摘出した場合の生存期間は917日、片側の乳腺の全摘出のみだと348日、腫瘍のある乳腺のみの切除の場合は2/3に再発が認められると報告されています。以上のことから本症例ではこれ以上腫瘍が大きくなる前に速やかに手術を行うこと、片側全摘出術を実施後、残りの乳腺も全摘出を実施することが勧められると説明し、オーナーに了承していただき手術を実施しました。本症例は術前検査で腎機能の低下が示されましたが様々な薬を組み合わせて使うことで血圧を維持し、麻酔のリスクを回避することができました。また術後の疼痛管理をしっかりすることで回復が早く、高齢でも早期に退院できたのではないかと思います。

乳腺腫瘍の発生には犬同様猫でも、ホルモンが関係し、未避妊メスでは避妊メスの約7倍の乳腺腫瘍の発生率があり、6ヶ月齢以下で避妊手術した猫では91%、1歳齢で避妊手術した猫では86%が未避妊メスと比べて発生リスクが低下します。このことから猫でも早期の避妊手術が勧められます。

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