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全耳道切除+外側鼓室包骨切り術(ウエスティー 12歳)

小さな頃から外耳炎の治療を継続して行なっていましたが、しばらく治療にできなくなったところ、顔面が腫れ、眼の横から膿が出ているとのことで来院されました。

初診時 側頭部が腫脹し膿瘍が破裂していました。

右顔面が腫脹しており、右眼の外側で膿瘍が破裂し、排膿していました。疼痛があり顔を触られることをかなり嫌がったので、まずは内科療法として抗菌薬と抗炎症薬の投与を実施、その後CT撮影を実施しました。CT画像では右耳の外耳道が石灰化、肥厚しており、閉塞が見られました。また鼓室包の中にも膿と思われる液体貯留を認めました。

CT画像 右水平耳道は狭窄し石灰化していました。
鼓室包にも液体貯留を認め全自動切除+外側鼓室包切開術の適応としました。

側頭部の膿瘍との関係は確認できませんでしたが、慢性炎症を起こしていた外耳道が破綻し感染が拡がり膿瘍を形成し、破裂したと考えられました。  
オーナー様には外耳道からの感染が広がって膿瘍を形成したこと、感染源となっている耳道切除を行う必要があること、内科療法や膿瘍の治療のみを行なっていても、症状は繰り返してしまうことを説明し、手術を行うこととしました。

手術は右外耳道を全て切除し、外側鼓室包を切開、清浄化しました。 膿瘍は洗浄と壊死組織の除去のみを行い、縫合等は行わず2期癒合をできるようにしました。

手術直後 閉創時に留置したドレーンは手術翌日には抜去できました。
膿瘍に関しては洗浄と壊死組織の除去のみを行いました。

手術翌日には元気食欲もあり、ドレーンを抜去し、退院としました。術後2週間後には膿瘍も閉鎖し、2ヶ月後には右耳の痛みもなくなり、現在は左耳の外耳道洗浄のみ行っています。

術後2ヶ月後 膿瘍は閉鎖し、腫脹もなくなりました。
被毛も生えそろい外耳炎の煩わしさから解放されて快適に暮らしています。

コメント

外耳炎は多くの犬に発生する疾患で、犬の5〜20%で罹患すると言われています。アレルギーや脂漏症などを原疾患に持つことが多く、時に腫瘍による外耳炎も見られます。進行すると、中耳炎、内耳炎を併発し、時に眼振、斜頚などの前提疾患、時に脳にまで炎症が波及してしまうことがあります。慢性化すると耳道が肥厚し閉塞、周囲に膿瘍を形成してしまいます。

本症例では外耳炎の治療を定期的に行えなかったために、慢性化し膿瘍を形成し破裂してしまいました。このような状態になると全耳道切除術が適応となります。外耳炎により外耳道の慢性肥厚が進行してしまうと洗浄や投薬などの内科療法の効果は期待できません。このような状態にならないように定期的な外耳洗浄を行うことが非常に大事です。また初期の慢性外耳炎なら耳道の一部を切除するだけのよりリスクの低い手術で済む場合があります。耳を取る手術というと多くのオーナー様が躊躇してしまいますが写真の通り外観上はほとんど変わりません。

本症例のようにアレルギーなどの外耳炎の素因を持っている子は残念ながら一生治療を続けることが必要です。外耳炎が末期的な状態にならないように定期的に病院で治療を継続しましょう。

 

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