眼下膿瘍(トイプードル 8歳 去勢雌)
トイプードル 8歳 去勢雌
口臭がひどく、ご飯を食べにくそう、眼の下が腫れてきたとのことで来院。
歯石は中等度付着し、歯肉炎はそれほどひどくない状態でした。
右の上顎第四前臼歯の歯根部より歯垢ではない膿が排出しており、臼歯の上の頬に膿瘍があり、破裂して排膿、出血していました。 頬部の膿瘍は上顎第四前臼歯の歯根膿瘍より発生したもので、以前にも同じ場所に膿瘍を形成したことがあるとのことだったので、膿瘍の原因である第四前臼歯を抜歯することにしました。
麻酔をかけ、スケーリングを実施、第四前臼歯と頬部膿瘍の連絡性(歯瘻)を確認し、抜歯を行ないました。
抜歯後、膿瘍部を洗浄、消毒し、縫合閉鎖しました。抜歯跡は頬粘膜のフラップで閉鎖しました。
術後、抗生物質の投与を行ない、10日後に再診。抜歯後も問題なく摂食できており、頬部の腫れなどもなく良好に経過していました。
右頬が破裂し排膿、出血していました。 | 右上顎第四前臼歯の歯根より排膿を認めました。 |
第四前臼歯抜歯後の歯瘻をフラップで閉鎖しました。 | 抜歯した第四前臼歯。遠心根(喉側の歯根、画面では左側の歯根)に感染が認められました。 |
コメント
臼歯に付着した歯石で増殖した細菌は歯の根っこである根尖にまで到達し、根尖周囲病巣を形成します。根尖周囲病巣は眼下の腫脹や歯瘻による皮膚、口腔内の排膿といった症状まで進行します。
動物は感染しているだけでは疼痛を示すことが少なく、皮下膿瘍の破裂や排膿などによって初めて疼痛、食欲不振などの症状を示すことが多いです。(この段階になっても症状を示さない子もいます)。
根尖周囲病巣ができてしまうと治療としては抜歯をしなくてはいけない場合がほとんどですので、ここまで症状が進行する前にスケーリングを実施したり、歯磨き等の日常ケアで予防していきましょう。