副腎皮質機能亢進症(ダックス 11歳 雌)
ダックス 11歳 雌。
最近水をやたら飲み、おしっこを大量にするようになったとのことで来院。
元気食欲はあるが以前よりボーっとしていることが多いとのことでした。
身体検査では腹部膨満、被毛の粗剛(毛艶がない状態)などを認めました。 血液検査、レントゲン検査、超音波検査などから他の疾患の可能性は除外され、副腎皮質機能亢進症を強く疑い、ACTH刺激試験という副腎皮質ホルモンを測定する検査を行った結果、副腎皮質機能亢進症と診断しました。
確定診断後、トリロスタンという内服薬を開始、飼い主様には飲水量をモニターしていただきました。1週間後には飲水量も低下し以前のようにはしゃぐようになったということでした。2ヶ月後再度ACTH刺激試験を行い、副腎皮質ホルモンの分泌が抑えられているのを確認しました。投薬開始から2年が経過していますが、飲水量も落ち着き、元気に過ごしています。
腹部レントゲン像 | |
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副腎皮質ホルモンの影響で腹筋が薄くなりポットベリー(お腹だけぽっこり出た状態)になっています。 |
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超音波画像 | |
左副腎 |
右副腎 |
小型犬では通常副腎の厚さは6mm未満といわれています。 本症例では両副腎とも10mmを超えており副腎の肥大が確認されました。 |
コメント
多飲多尿、腹部膨満など典型的な副腎皮質機能亢進症の症例でした。しかし、多飲多尿などは腎不全、糖尿病、子宮蓄膿症など様々な疾患で起こりうる症状ですので、各種検査を行い、他の疾患を確実に除外してから、副腎皮質機能亢進症の治療を行う必要があります。 多飲多尿かどうかを判断するにはご自宅で飲水量を測定してみてください。体重1kgあたり50ml程度が通常の犬の飲水量の目安です。これが100ml/㎏を超えているようだと何らかの疾患を抱えている可能性が高いですので動物病院を受診されたほうがいいでしょう。 副腎皮質機能亢進症は進行すると糖尿病を併発したり、難治性の皮膚病になったり、肺動脈血栓塞栓症という呼吸困難に陥る危険な病気を引き起こすことがある疾患です。多飲多尿、何となく元気がないなどの症状がある時は早めに病院を受診して、重篤な状態にならないようにしましょう。