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腫瘍科

犬と猫のリンパ腫

リンパ腫とは?

リンパ腫とはリンパ球という免疫を担う細胞が腫瘍になったものです。リンパ球は体のどこにでも存在していますので、リンパ腫は体の様々な部位で発生します。また、体のどこかでリンパ腫が発生した場合、腫瘍細胞は一部にとどまっておらず全身に存在していると考えられます。
リンパ腫は発生部位によって、多中心型、消化器型、皮膚型、縦隔型などに分類され、構成する腫瘍細胞によってT細胞型、B細胞型に分けられます。さらにそれぞれ悪性度によって低悪性度、高悪性度があります。
発生部位、構成細胞、悪性度によって、治療法や予後が変わってきます。

リンパ腫の細胞診

多中心型リンパ腫:脾臓(点線囲い)にもリンパ腫が拡大していました。

リンパ腫の細胞診

猫の消化管型リンパ腫:慢性嘔吐が続き、転院してきた症例。胃粘膜の胃粘膜の異常な肥厚を認めました。

リンパ腫の細胞診

消化管型リンパ腫:腸間膜リンパ節(点線囲い)の腫大。黄矢頭は小腸。

リンパ腫の細胞診

皮膚リンパ腫:口腔粘膜に発生したリンパ腫



どんな検査をするの?

リンパ節が腫れた場合、最初に細い針を刺して細胞を回収し(針生検)、顕微鏡で観察する細胞診を行います。多くの場合、リンパ腫が確定的な細胞が観察され、その日のうちに診断が可能となります。
ただ低悪性度のリンパ腫の場合など、炎症や感染症などと鑑別が難しい場合は組織を一部切除して病理組織検査を行い(切除生検)、リンパ腫の鑑別を行います。また、針生検で採取した細胞を用いて、遺伝子検査を行うことでT細胞型、B細胞型の鑑別を行います。その他、リンパ腫の広がり具合(ステージング)をみるために胸部レントゲンや、腹部超音波検査を行い、高カルシウム血症の有無や全身状態の把握のために血液検査を実施します。

リンパ腫の細胞診

リンパ腫の細胞診。大型のリンパ球が大勢を占めています。

どんな治療をするの?

リンパ腫は発見された時点で、全身に腫瘍細胞が広がっている状態です。ですので、大きくなっているリンパ節や腫瘤を切除してもすぐ再発したり、別の場所に出現したりします。基本的にはリンパ腫は抗がん剤を用いた化学療法で治療を行います。
リンパ腫の化学療法には使用する薬剤や、投与回数などにより様々な方法があり、これらをプロトコールと言います。
現在、様々なプロトコールが使用されていますが大別すると以下のように分類されます。

単剤療法:一つの抗がん剤のみを繰り返し使用する方法です。リンパ腫に効果が最も期待できるドキソルビシンを3週間ごとに使用する方法が主流です。投与間隔が3週間に一回で通院頻度が少なくてすむことや、費用が多剤併用療法に比べると安価な点がメリットとしてあげられます。一方で、多剤併用療法に比べると治療成績は劣ってしまうというデメリットがあります。

多剤併用療法:異なる作用機序の抗がん剤を複数用いることで、多方面から腫瘍細胞を制御する方法です。単剤療法に比べ、治療成績が良く、治療効果が長く続くことが期待できます。一方で抗がん剤導入初期は1週間に一度の通院が必要であること、副作用が単剤療法より出やすいこと、費用が高額になることがデメリットとしてあげられます。

レスキュー療法:抗がん剤療法を継続している途中で、薬剤の効果が減少あるいは消失した時に、これまで投与していた薬剤とは異なる抗がん剤を用いて治療にあたります。これをレスキュー療法と言いますが最初に行われる単剤療法や多剤併用療法などの導入プロトコールと比較すると効果は劣ります。これは使用する抗がん剤の効果が弱いというよりも、抗がん剤に対して耐性を獲得した腫瘍細胞が増殖してきているからであり、いかなる治療も効果が期待できなってきていることが考えられます。

最も多い犬の高悪性度多中心型リンパ腫を例にとると、無治療の場合、生存期間は1ヶ月ほどと言われています。単剤療法(ドキソルビシン単独プロトコールの場合)では奏功率(腫瘤が完全消失、または縮小した割合)は60〜85%、生存期間は6〜9ヶ月、多剤併用療法(UW-25プロトコールの場合)では奏功率80〜95%、生存期間は10〜12ヶ月とれています。レスキュー療法は様々な種類がありますがいずれの場合も奏功率が30〜50%、奏功期間は3〜4ヶ月ほどとされています。

リンパ腫は発見された時点で、全身に腫瘍細胞が存在していると考えられ、抗がん剤による治療を行っても根治(=ガン細胞が全くない状態)することは難しい腫瘍です。一方で治療を行って寛解状態(=腫瘍細胞が肉眼で確認できない状態)にすることは可能です。リンパ腫の治療はこの寛解状態をいかに維持できるかにかかってきます。寛解状態では、ペットたちはいつものようにご飯を食べたり、遊んだりできます。体の中にがん細胞がなくなったわけではないので治療を継続したり、定期的な検査は必要ですが、飼い主様といつもと同じようにできるだけ長く過ごしてもらうことを目標に当院では治療を実施しています。

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